「コーイチ・白波 救援ペーパー 2006/10/08」
コーイチ君が、最近可愛い。(笑)
最初の頃の獣っぽさが無くなって、ちょっと丸くなったけど、未だ石ころ並には危ないところがまた、可愛いよ!
何が可愛かったって、カレーライスを食べてるところだね!
いやもう、あれだけ幸せそうに食べられると、朝の7時から、夕飯はカレーにしようとか思っちゃいましたよ、全く!!
あのにこにこ顔は、トークショーとかに行ったら、きっと見れるんだろうね〜。トークショーかー、源ちゃんも見たいから、一度は行きたいよな〜。
と言うことで、不動のおっさん救援ペーパーに続いて、今度は白波救援ペーパーです!(救援の必要は無いけど。笑)
白波鋼一は最近、少しばかり朝が早くなった。
〈コーイチぃ! もう起きろよー。外はもう明るいぜェ! かおりちゃんのポスターに、おはようの時間だろー〉
狭いテントの中で斬龍刃が騒ぎ出すので、寝てなど居られなくなる。仕方なく起きて、テントから這い出し、腕につけている魔弾龍を、野瀬かおりが微笑む、もうとっくにセール期間の終わった商店街のポスターの前の椅子に、置いてやる。
〈おっはよう、かおりちゃん。今朝もコーイチがなかなか起きなくてさァー、苦労しちまったぜー〉
機械と魔法のハイブリッドは、何時ものように楽しげに、ポスターのかおりに話しかける。ブレスレット同然のものが、ポスターに向かって話しかける図式は、端から見れば奇妙で滑稽なものなのだろうが、彼らが勝手に借用している林の中に、こんな早朝から入ってくる者などいないので、気にしない。そう、夏休みの子供達が、目覚ましナシで学校に行くときよりも早くに起きて、カブトムシやクワガタムシを採りに来るとき以外には。
〈なあ、コーイチ。今日は花買いに行こうぜー。ちゃんと、黙ってるからさぁ。やっぱり、本物のかおりちゃんの方が可愛いものなー。 またかおりちゃんと話しして、リュウジは元気にやってるっよーって、言いたいよなぁ〉
斬龍刃が楽しそうに、何処か寂しそうにそう言うのを背中で聞きながら、鋼一は紅茶を入れる手をいっとき止めた。
「ニューヨークでのライブは、どうなったんだ?」
その場しのぎとは言え、別れ際にかおりに言った事を、鋼一は淡々とした口調で尋ねる。
〈あー、ライブかー。そこ突かれると痛いよなあ。まあ、オレの歌が上手いってのは本当だし、コーイチはそこんとこ良く知ってるけどなぁ。・・・ああ、そうかー、たまにはSHOTの連中に聞かせてやるか!〉
自分の思いつきが気に入ったのか、斬龍刃は椅子の上で、忙しく楽しげに、紫の目を点滅させた。
「冗談じゃないぞ。なんでお前の暇つぶしに、またあんなところに行かなくちゃならないんだ。魔法爆発も衛星攻撃もないのに、鳴神の奴と顔をあわせたら、面倒なだけだ。 花屋だけなら、行ってやってもいいぞ」
マグカップに注いだ紅茶を眺めながら、やっぱりミルクが欲しいなと考えつつ、鋼一は返す。
〈ちぇーっ。楽しいと思ったんだけどなぁ〉
魔弾龍は声音だけで、道端の小石でも蹴飛ばして、ちょっと膨れたような様を表して瞬く。
〈やっぱり、この戦いが終わらなきゃ、オレのハッピーライフも来ないってことかー〉
斬龍刃の声は、どこか溜息を吐くようにさえ聞こえた。
「・・・そう言うことだな」
鋼一の声音も、いつもより柔らかく聞こえる。
林の中に差し込む光は、まだ淡い朝のものだ。
〈まあ、そーゆーことなんだよ。かおりちゃん〉
斬龍刃はまた、ポスターのかおりに話し出した。
〈オレはまだちょっと、あんたを迎えには行かれないみたいだ。三人でいろんなとこへ行く約束、もうちょっと待っててくれよな。それと、コーイチは今あんまり金がないからさ、〉
「うるさい」
〈SHOTを脅して借りるって言う手も、あるんだけどよ〉
「悪くない手だが、面倒だ」
〈コーイチがちゃんと、料理できるようになるまで、我慢してくれな〉
「それが何の関係がある」
〈あるだろー。何処へいったって、テントに焚き火で過ごしてきたお前が、かおりちゃんと一緒だからって、金出して泊まるわけねーじゃんよ。金ないんだしー〉
「悪かったな」
〈せっかくかおりちゃんが一緒なのに、野宿で旅行で飯が不味いんだぜー。男として、どうよー〉
「・・・何が言いたい」
〈野宿が基本のくせに料理できないなんて、笑えるよなー〉
「・・・ザンリュウ」
〈ん〜?〉
「飯を食わない奴に、言われたくはない」
〈そうかー? 完璧なる客観的意見だと思うけどなー?〉
「どこがだ」
〈ゴウリュウなら、不味い確率80%とか言ってくれそうだよなー〉
「オレにケンかを売ってるのか」
〈違うってー〉
「じゃあ何だ」
〈うーん、何て言うか、ネギが、気になる〉
「あ?」
〈ヨーロッパには、なかっただろうー〉
「・・・ああ」
〈コーイチには、料理できなかっただろうー〉
「・・・ああ」
八百屋でただネギと言ったら、丸くないあの細長いのが出されたのだが、鋼一は否定するのも面倒なので、そのまま買ってきた。だが、結局、どう扱ったらいいのか、最後までわからなかったのだ。
〈オレはもう、あれがどうなるもなのか、気になってしょうがないんだよ〉
ジタバタするような、魔弾龍の声の調子に、鋼一は溜息を吐く。
「気にするな」
〈気になるってーの! なあ、SHOTのオペレーターの彼女に聞いてみようぜ!〉
「聞きたくない」
〈聞いてくれって! なあ、頼むよ〉
「・・・」
〈夏の間、カブトムシとって遊んでたこと、内緒にするからさぁ〉
「・・・わかった」
黄色の浮かれた商店街セールのポスターの前で、斬龍刃が嬉しげに瞬き、黒い魔弾戦士になる男が、項垂れて溜息を吐いた。
あのオペレーターが、料理の出来る女だといいな、と思いながら。
長ネギがね、ずっと気になってたんですよ。イギリス育ちのくせに!って! 買い物しても腹減ったままのコーイチとか、蚊が多そうなテント張ってある場所とか!いろいろ。笑